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競馬新聞を片手にJRAのネット投票で馬券を買う。この何とも中途半端なスタイル、実は今どきの競馬ファンあるあるなのである。馬券はスマホでポチッと買えるのに、予想の段階になると駅の売店で新聞を買い、電車の中で赤ペンを走らせる。で、レースが終わればその新聞はゴミ箱行き。自分が何を考えて印をつけたのか、先週のことすら思い出せない。
そんな「ちょっと待てよ」な状況をつくばのIT企業がすっきり解決しようというのだ。株式会社シンプルウェイが2025年11月7日にリリースした「ウマピア」は予想から記録、さらにはAIによる予想の自動化まで、すべてをデジタルで完結させる新世代の競馬予想サービスである。代表取締役の大野裕介氏が率いるこのチーム、競馬ファンの「もっと見やすく、もっと使いやすく」という声を真正面から受け止めた格好だ。
ウマピアの画面を開くとまず目に飛び込んでくるのがデジタル馬柱の見やすさである。オッズ、戦績、騎手データといった情報が一画面に集約されていて、紙の新聞のようにページをめくったり、欄外の小さな文字を目を凝らして読んだりする必要がない。気になる項目はワンクリックで強調表示できるから、まさに赤ペン感覚。いや、赤ペンよりスピーディかもしれない。

従来のネット競馬新聞というと、情報は豊富だけど画面が見づらかったり、操作が複雑だったりと、結局は紙に戻ってしまうケースが多かった。けれどウマピアは「見やすさ」と「操作性」の両立にこだわったという。スマートフォンでもパソコンでも使えるWebサービスとして設計されているから、通勤電車の中でも、週末のリビングでも、自分のスタイルで予想が楽しめる。
基本的な利用は無料というのも嬉しい。まずは触ってみて、気に入ったら有料のプレミアムコースに進むという選択肢もある。この辺りの設計、実に現代的である。
さて、ウマピアの真骨頂は何と言ってもAI予想機能だ。ただし、よくある「AIが勝手に馬券を選んでくれる」というタイプではない。ここがミソなのだが、ユーザーが事前に自分の予想ロジックを設定すると、AIがそれを学習して出馬表が確定した段階で自動的に予想を生成してくれるのである。

例えば「前走で3着以内に入った馬を重視する」とか「芝の長距離戦では逃げ馬を狙う」といった自分なりのセオリーを登録しておく。するとAIがそのロジックを理解し、毎週のレースで自動的に印をつけてくれるという仕組みだ。忙しくて予想する時間がない週でも、AIという”予想の相棒”が代わりに下準備をしてくれる。もちろん、最終的な判断は自分でするにしても、この手間の削減は大きい。

このAI予想をフル活用するにはプレミアムコースへの加入が必要とのことだが、自分の予想スタイルを数値化して、過去レースで検証できるというのは、かなり面白い試みだと思う。「このロジック、本当に当たるのか?」を客観的にチェックできるわけだから。
競馬新聞の最大の弱点は、そこに書き込んだ情報が使い捨てになってしまうことだった。先週の予想、先月の予想、昨年のG1での予想。すべて記憶の彼方か、あるいはゴミ箱の中である。ウマピアはこの「もったいない問題」も解決している。
レースごとに印やチェックマーク、一言メモを記録できる「競馬ノート」機能があって、過去の予想がすべて保存される。「あのとき、なぜあの馬に◎をつけたんだっけ?」という振り返りができるのは、予想の精度を上げる上でも重要だろう。さらに、つけた印から自動で買い目を選定してくれる機能や、券種別に収支を集計する機能まである。

自分の競馬人生を可視化するというか、データとして蓄積していく楽しみ。これはデジタルならではの醍醐味である。紙の新聞では絶対に不可能だったことが、ごく自然にできてしまう。
ウマピアのもうひとつの注目機能が、予想の共有とコミュニティだ。ネット上には競馬予想を公開している人が山ほどいるが、正直なところ「当たったレースだけを強調している」ケースも少なくない。回収率300%! なんて謳っていても、その計算方法が怪しかったりする。
ウマピアでは、事前に登録した予想が自動的に集計され正真正銘の回収率や的中率が公開される仕組みになっている。後出しジャンケンができないから、本当に勝っているユーザーが一目瞭然というわけだ。全国の競馬ファンと切磋琢磨できる環境は、予想の腕を磨く上でも刺激になるだろう。

自分の予想力に自信があるなら、ここで実力を証明することもできる。将来的には「予想で生計を立てる」という夢も、あながち非現実的ではなくなるかもしれない。少なくとも、透明性の高い成績データがあれば信頼できる予想家を見つけやすくなる。
考えてみれば、競馬を取り巻く環境はここ20年ほどで劇的に変わった。昔は競馬場や場外馬券売り場に足を運ぶのが当たり前だったのが、今やJRAのネット投票で自宅からでも馬券が買える。パソコンやスマホひとつあれば、レースの映像も見られるし、オッズもリアルタイムでチェックできる。
それなのに、予想の部分だけがアナログのまま取り残されていた。いや、アナログが悪いわけではない。紙の新聞には紙の良さがある。でも「選択肢がない」というのは、やはり不便である。デジタルで完結したい人には、デジタルの選択肢があっていい。
ウマピアはまさにその橋渡し役として登場したサービスだと言える。株式会社シンプルウェイという、茨城県つくば市に本社を置く企業が手がけているというのも興味深い。つくば市と言えば、筑波研究学園都市として知られる科学技術の街。そんな土地柄が、このサービスの開発思想にも表れているような気がする。
ウマピアが目指しているのは、一人ひとりの競馬スタイルを支え広げていくプラットフォームだという。予想のスタイルは人それぞれだ。データを徹底的に分析するタイプもいれば、血統や馬体を重視するタイプもいる。直感派だっている。そのどれもが正解で、どれもが競馬の楽しみ方のひとつである。
デジタル馬柱の見やすさ、AIによる予想サポート、記録機能、そしてコミュニティ。これらの機能を組み合わせることで、自分だけの競馬スタイルが確立できる。今後も機能を拡張していく予定とのことだから、ユーザーの声を反映させながら、どんどん進化していくのだろう。
馬券購入がネットで完結する時代になって久しいが、予想もようやくデジタルの時代に追いついた。2025年11月7日という日付は、競馬予想の歴史において、ひとつの節目として記憶されるかもしれない。紙の競馬新聞を愛する人たちに敬意を払いつつも、新しい選択肢が生まれたことを素直に喜びたい。ウマピアという名前、なかなかいいじゃないか。競馬のユートピア、つまり理想郷を目指すという意味合いも込められているのだろう。デジタルとアナログ、新旧が共存しながら、競馬文化がより豊かになっていく。そんな未来を予感させるサービスの登場である。
男の感性に火をつける、ライフスタイルWEBマガジン「GENTS-ジェンツ-」運営。
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