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ゴルフクラブを買うとき、試打するのは当たり前だ。ただ、何本か打ってみて「これがいいかな」と感覚で決める人がほとんどだろう。スイングを科学的に測定して、データに基づいてクラブを選ぶとなると話は別である。ミズノがこの12月23日から全国で始める新しいフィッティングサービスは、まさにそこを本格的にやってのけようという試みだ。
今回導入されるのが「SET OPTIMIZER(セットオプティマイザー)」という専用ツール。何がすごいかといえば、世界で唯一、ドライバーからアイアン、ウエッジまで、一つの機器で測定できるという点だ。これまでは別々の機器が必要だったわけで、フィッティングを受けるゴルファーにとっても、あっちこっち移動する手間が省けることになる。
ミズノがクラブフィッティングサービスを始めたのは2001年のことだから、もう25年近くになる。全国のミズノゴルフカスタムフィッティングショップ、通称MIZUNO GCF SHOPは451店舗。今回の新ツールはまずアイアンフィッティングから始まり、ドライバーは来年2026年2月頃からの対応になるという。
このフィッティングツール、実は2017年に導入された「シャフトオプティマイザー3D」という前作がある。その進化版というわけだが、何より興味深いのは「3球打てばゴルフが変わる」という謳い文句だ。たった3球の試打でスイングの構成要素を測定できるというのである。

開発にはセイコーエプソン株式会社(長野県諏訪市、代表取締役社長 吉田潤吉)が協力している。センシングテクノロジーに強い会社だけに、精密な測定が可能になったのだろう。今回のバージョンでは新たに「ローテーション率」を加えた10要素を測定し、より精度の高い『SWING DNA』を導き出せるようになった。
この『SWING DNA』という概念が面白い。ミズノによれば、それぞれのゴルファーが生まれながらに持っている「各人特有のスイング挙動」のことを指すという。思い通りにボールが飛ばないのは、この『SWING DNA』にクラブが合っていないからだ、というわけだ。いわば遺伝子レベルでクラブを選ぼうという発想である。
前作の「シャフトオプティマイザー3D」が導入されて以来、日本国内で25万件、全世界では60万件以上のフィッティングデータが蓄積されている。これだけのデータがあれば、精度も上がろうというものだ。しかもこのデータ、新商品開発にも活用しているというから、ミズノのフィッティングビジネスは単なるサービスではなく、商品開発の根幹をなしているといっていい。
今回の「SET OPTIMIZER」の最大の売りは、やはりドライバー、アイアン、ウエッジを一つの機器で計測できることだろう。単一機器で3種類のクラブにおけるシャフトの動きとスイング挙動を計測できるのは、世界でこれだけだという。特許出願中というから、他社が真似しようとしてもすぐにはできない技術なのだろう。

仕組みとしては、それぞれの専用シャフトにセンサーを付け替えることで、3種類のクラブフィッティングを連続して受けられるようになっている。ドライバーからアイアン、ウエッジまで”セットで”最適なクラブを提案できるというのがミソである。

特にウエッジについては、ピンまで30ヤードを想定したアプローチショットを測定するというこだわりぶり。練習場での豪快なショットではなく、実際のコースで使う場面を想定しているあたり、実戦的だ。僕なんかはこの30ヤードのアプローチが一番苦手なので、このフィッティングはぜひ受けてみたい気がする。
もう一つ注目すべきは、センサーの軽量化である。前作から約35gも軽くなったという。たかが35gと思うかもしれないが、ゴルフクラブで35gの差は大きい。「フィッティングツールが重くて振り切れない」というゴルファーの声に応えたというから、実際に不満があったのだろう。こうした細かい改良の積み重ねが、より多くのゴルファーにフィッティング体験を届けることにつながる。
ミズノのフィッティングビジネスには、一つ大きな強みがある。それは、導き出されたベストなクラブを仕上げる技術を国内の生産工場に持っているということだ。具体的にはミズノテクニクス養老工場である。
最近はグローバル化で、多くのスポーツ用品メーカーが生産拠点を海外に移している。そんな中で、フィッティングから製造まで一貫して国内で行えるというのは大きなアドバンテージだろう。測定して終わりではなく、その場でヘッドとシャフトを組み合わせて試打できる「インターチェンジャブルシャフトシステム」も導入しているというから、きめ細かいサービスである。

ミズノが掲げる「MIZUNO FITTING PHILOSOPHY」(ミズノフィッティングフィロソフィー)は「ゴルファーの数だけスイングが存在し、価値観・プレースタイル・技量・悩みは人それぞれである」という考えに基づいている。独自のフィッティングツールから導き出す科学的根拠と経験・ノウハウが豊富なフィッターによる診断で、一人一人にベストなクラブを届けるというわけだ。
25年間にわたるクラブフィッティングサービスの蓄積は伊達ではない。全国のMIZUNO GCF SHOPには、ミズノが認定したフィッターが配置されており、彼らの経験と新しいツールの科学的データが組み合わさることで、より精度の高いフィッティングが可能になる。

ミズノが目指しているのは、”No.1フィッティングカンパニー”である。ゴルフクラブメーカーとしてではなく、フィッティングカンパニーを名乗るあたり、本気度が伺える。実際、60万件以上のフィッティングデータは他社の追随を許さない規模だろう。
今回の「SET OPTIMIZER」導入は、その目標に向けた大きな一歩である。世界で唯一の技術を持った専用ツールを開発し、まずは日本国内で先行して運用を開始する。うまくいけば、世界展開も視野に入ってくるはずだ。
思えばゴルフというスポーツは道具との相性が極めて重要なスポーツである。プロゴルファーが細かいセッティングにこだわるのは当然として、我々アマチュアゴルファーだって自分に合ったクラブを使えばスコアは変わってくる。ただ、これまではそれを知る手段が限られていた。
「3球打てば、ゴルフが変わる」というキャッチフレーズは、少々大げさに聞こえるかもしれない。でも、科学的なデータに基づいて自分のスイングを知り、それに合ったクラブを選べるというのは、確かに魅力的だ。12月23日から始まる新しいフィッティングサービス、ゴルフ好きなら一度試してみる価値はあるだろう。
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