PXGの新作パター「Mustang ZT」に見るゴルフギアの進化

ゴルフというスポーツは、実に不思議なものである。わずか数センチの打点のズレが、ボールの行方を大きく左右する。特にパッティングとなると、その繊細さは際立つ。グリーン上でのわずかな傾斜、芝目の読み違い、そして何より手元の微妙なブレが、カップインを阻むのだ。

そんなゴルファーの永遠の悩みに対して、また一つ興味深い解答が提示された。PXG(Parsons Xtreme Golf)が発表した新作「PXG Mustang ZT パター」である。2025年10月23日の発売を前に、10月16日から先行予約が始まるこのパターは、税込81,400円という価格設定からも分かる通り、決して手軽な買い物ではない。しかし、その技術的なアプローチには、なるほどと唸らせるものがある。

トルクを抑え込む、ゼロトルク設計という発想

このパターの核心は、「ゼロトルク設計」という考え方にある。トルクとは、つまりねじれのことだ。パターを振る際、ヘッドが意図せず回転してしまうと、フェースの向きが狂い、ボールは思った方向に転がらない。Mustang ZTは、このトルクを極限まで抑え込むことを目指した設計なのである。

発売日:2025年10月23日(※先行予約は10月16日開始)参考価格:税込81,400円

その要となるのが、PXGが特許を取得している「Sホーゼル構造」だ。シャフトの軸を重心のすぐ上に配置することで、トゥアップバランスポイントを生み出している。重心がシャフト軸のすぐ下に位置する、この幾何学的な配置により、軸点に対して重心からのトルクが発生しない。つまり、プレーヤーが意図的に操作しなくても、フェースは常に軌道に対してスクエアを保つというわけだ。

中空ボディと極薄フェースが生み出す打感

ヘッドは303ステンレススチールから精密に削り出されており、内部にはPXG独自の「S-COR™ポリマー」を注入した中空構造が採用されている。このポリマーが構造の安定性を高めると同時に、打感と打音を向上させる役割を果たすのだという。中空ボディという設計により、従来のソリッドボディ型パターよりも重心がフェース寄りに配置され、ホーゼルをより前方に設置することでバランス性能が向上する。さらに、クラブヘッド外周部に重量を再配分することで、慣性モーメント(MOI)が高まり、ミスヒット時のねじれに対する耐性と寛容性が向上しているのである。

フェースの厚さは、わずか0.055インチ。この超極薄フェースには「ピラミッドフェースパターン」という精密加工が施されており、ゴルフボールのディンプルとの接触を安定させ、ボールの転がりを向上させるよう設計されている。このミーリング形状により、インサート型パターのような柔らかい打音を生み出しつつ、削り出しフェースならではのしっかりとした打感も維持しているのだという。フェースの薄型化とポリマーによる内部サポートの組み合わせが、インパクト時の振動周波数を制御し、打音の一貫性を保つ仕組みだ。

標準仕様として、4°の測定ロフトに対して、1°のハンドファーストが設定されているため、実際のプレー時には3°として機能する。ヘッドの標準重量は365gで、調整可能な範囲は350gから385gまで。プレーヤーの好みに応じて、ある程度のカスタマイズが可能というわけだ。

PXGというブランドの哲学

PXGの創業者兼CEOであるボブ・パーソンズ氏は、「Mustang ZTの登場により、ゼロトルクラインアップをさらに拡充し、ゴルファーそれぞれのプレースタイルに合った選択肢を提供します」とコメントしている。同社は「すべての新製品は飛躍的に優れたものであるべき」という信念のもと、ゴルフクラブからスポーツファッションまで、性能を大幅に向上させる製品開発を続けてきた。起業家でもあり熱心なゴルファーでもあるパーソンズ氏の情熱が、このブランドの原動力となっているのだろう。

PXGはドライバー、フェアウェイウッド、ハイブリッド、アイアン、ウェッジ、パターなど、右利き・左利き双方のゴルファー向けにカスタムフィットゴルフクラブを提供している。また、パフォーマンス性に優れたゴルフ&ライフスタイルアパレルやアクセサリーも展開しており、総合的なゴルフブランドとしての地位を確立している。

PXGのプロフェッショナルスタッフには、Christiaan Bezuidenhout、Eric Cole、Jake Knapp、Patrick Fishburn、Zach Johnson、David Lipsky、Henrik Norlander、Chad Ramey、Mason Andersen、Cristobal Del Solar、Patrick Cover、Brandon Crick、Seth Reeves、Augusto Nunez、Paul Barjon、Sebastian Cappelen、Kevin Dougherty、Ryan McCormick、Shad Tuten、Joey Garber、Nathan Petronzio、Celine Boutier、Linnea Strom、Mina Harigae、Auston Kim、Gina Kim、Megan Khang、Minji Kang、Kaitlin Milligan、Christina Kimといった選手たちが在籍している。世界各地のツアーで活躍する選手たちが、PXGのクラブを選んでいるのだ。

南青山の直営店で手に取れる

PXG Mustang ZT パターは、PXGの直営店、正規販売店、そしてPXG公式オンラインストア(PXG.com)にて販売される。東京都港区南青山にある直営店「PXG AOYAMA」は、南青山6丁目3番16号の1階に店を構え、11時から20時まで営業している。実際に手に取り、その打感を確かめてみたいという向きは、こちらを訪れてみるのもいいだろう。電話番号は03-6712-6888である。

PXG AOYAMA(直営店)   
■ 住所:107-0062 東京都港区南青山6-3-16 1F
■ 営業時間:11:00~20:00
■ 電話番号:03-6712-6888                
■ 店舗情報:https://www.pxg.com/ja-jp/locations/aoyama.html 

ゴルフギアの進化は、まだまだ止まらない。パターひとつとっても、ここまで精密な設計と技術が注ぎ込まれている時代なのである。81,400円という価格は決して安くはないが、それだけの技術的な裏付けがあるということなのだろう。ゴルフに真剣に取り組む人にとって、道具選びもまた、スコアアップへの重要な要素なのだ。

この記事の著者

男の感性に火をつける、ライフスタイルWEBマガジン「GENTS-ジェンツ-」運営。
40代を中心とした大人世代に向けて、茨城県南エリアの情報を本当に良いと感じたものだけを厳選して紹介しています。