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災害大国と呼ばれる日本で、避難所の在り方が問われ続けている。地震、台風、豪雨と、毎年のように各地で自然災害が発生し、多くの人々が避難生活を強いられる。そんな中、体育館の床に雑魚寝という旧態依然とした避難所のイメージを覆す、画期的な商品が注目を集めているのである。
株式会社TCL(愛知県名古屋市)が販売する「EZDOME HOUSE(イージードームハウス)」が、2025年度グッドデザイン賞において、グッドデザイン・ベスト100を受賞した。この商品、一言で言えばDIYで組み立てられるドームハウスなのだが、その設計思想が実に興味深い。
EZDOME HOUSEの最大の特徴は、専門的な知識がなくても大人2名で90分あれば組み立てられるという手軽さだ。災害発生時、避難所の設営には迅速さが求められるが、従来は専門知識や大掛かりな機材が必要で、十分な避難所を用意するのは容易ではなかった。
ところがこのドームハウス、1基分の部品は軽トラック1台で運搬できる量に収まる。備蓄にも適しており、実際に全国の自治体から問い合わせが寄せられているという。既に愛知県東郷町、北海道猿払村、奈良県北葛城郡河合町へは納入済みで、災害用備蓄品としての導入が広がりつつあるのだ。
実証実験も行われている。2025年3月、長野県伊那市と諏訪市で実施されたイタリア式避難所システム実動訓練では、冷暖房付き家族用テントとしてEZDOME HOUSEが採用された。マイナス8度という厳しい環境下での宿泊体験にもかかわらず、参加者からは「テントより遥かに快適」という高評価を得たという。災害ボランティア向けに組み立て指導も行われ、その有用性が確認されたわけである。
避難所と聞いて多くの人が思い浮かべるのは、プライバシーのない体育館や、無機質なプレハブ小屋といったイメージだろう。過密状態、感染症リスク、精神的負担と、課題は山積みだ。
EZDOME HOUSEのドーム型デザインは、そうした従来の避難所のイメージを覆すものになっている。自然と調和する形状で、災害時の簡易住居にありがちな物々しさがない。内観も角がなく開放的で、実際のサイズは縦横3メートル、高さ2.5メートルなのだが、それ以上に広々と感じられる空間設計なのだという。
有事の際、不要なストレスを感じることなく快適に過ごせる。これは避難生活において、想像以上に重要な要素である。
基本構造は、壁パネル(上段14枚、下段10枚)と窓付き壁パネル3枚、ドアパネル、自然換気システム付き天井パネル、床パネルで構成されている。そしてこれらのパネルを入れ替えたり、オプションを追加することで、幅広いカスタムが可能なのだ。
用途に応じて自由度の高い設計ができる。災害時の避難シェルターとしてだけでなく、様々な活用方法が考えられるだろう。
EZDOME HOUSEを販売する株式会社TCLは、2014年4月設立。親会社は株式会社ホワイトハウスで、こちらは東海地区に40店舗以上を展開する輸入車販売のグループ企業である。プジョー、シトロエン、BMW、MINI、ボルボ、アウディなど、多彩なブランドの正規販売店を手がけているのだ。
輸入車販売会社がなぜドームハウスなのか、と思うかもしれない。だが同グループは、高機能ドライブレコーダー「Smart Reco」や、おしり洗浄機能が使える折り畳みトイレ「どこでもチェアレット」、革新的消火具「ファイヤーショーカスティック」など、ユニークな商品開発も手がけているのである。自動車関連に留まらない、幅広い事業展開を行っているわけだ。
EZDOME HOUSEは、「一人でも多くの命を守りたい」という思いから生まれた商品だという。素材の選定から構造、空間設計に至るまで徹底的に研究し最適化され、繰り返される災害の教訓から生まれた、人命を守るための必然のデザインなのである。
グッドデザイン・ベスト100の受賞は、その設計思想とデザインの完成度が高く評価された証だろう。今後、全国の自治体での導入が進めば、災害時の避難所の在り方が大きく変わっていくかもしれない。体育館の床に段ボールを敷いて雑魚寝、という光景が過去のものになる日が来ることを願うばかりである。
商品の詳細は、EZDOME HOUSEの公式サイトで確認できる。
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