記事を探す
運営・お問い合わせ
松本走り(まつもとばしり)は、長野県松本市内でよく見られる危険な運転行為の俗称である。「松本ルール」とも呼ばれる。10年以上前から問題視されており、道路交通法に違反する行為である。
松本走りは、主に交差点での強引な右折を中心とした危険運転を指す。代表的な行為は以下の通りである。
松本走りが生まれた背景には、松本市特有の道路事情がある。
松本市は城下町として発展したため、道路が狭く複雑である。市内のほとんどが片側一車線で、右折レーンのある交差点が少ない。右折専用信号があっても1分に満たないことが多い。
このため、右折待ちをすると後続車が渋滞してしまう。後ろで待つ車に気を遣い、わずかな隙を見つけて強引に右折する習慣が根付いていった。「右折信号まで待っていると後ろから急かされる」という文化が形成されたのである。
松本走りは複数の点で危険である。
道路交通法では、右折車は対向の直進車や左折車を優先し、交差点の中心付近を大きく回って徐行することが義務付けられている。
しかし松本走りでは、急いで直線的に右折するため速度が出やすく、安全確認がおろそかになる。対向車との衝突リスクが高まるだけでなく、右折先の横断歩道にいる歩行者との接触事故の危険性も増大する。
歩行者からすれば、スピードを落とさない車が目の前を通過するのは恐怖そのものである。
観光客がレンタカーで松本市内を運転する際、この松本走りに遭遇して事故になりかけたという報告も多数ある。
松本走りを行うと、以下の交通違反に該当する。
人身事故を起こした場合、危険運転として逮捕され重い刑罰が科せられる可能性がある。
松本市では松本走りによる事故が多発している。
平成26年から29年の4年間で、右折時の事故が300件以上発生した。2018年だけでも78件の事故が起きている。減少傾向は見られず、深刻な状況が続いている。
松本地域は日常生活を車に依存する地域であり、交通事故の発生率も高い水準にある。
松本市と松本警察署は2003年から「交通マナー向上運動」を開始し、バスやタクシーに「交差点での強引な右折禁止」のステッカーを貼るなどの対策を実施してきた。
2019年3月には、市の広報誌「広報まつもと」で松本走りを特集し、具体的な違反行為を明示して注意を呼びかけた。
同年5月に滋賀県大津市で園児ら16人が死傷する事故が発生した際、松本市長は改めて市民に対し「松本走りをやめて、ルールを守った運転を」と要望した。
最近では松本走りをする人が減ってきているという声もある。特に若い世代は松本走りという言葉自体を知らないケースも増えている。
一方で、JAFの調査によると、長野県は信号機のない横断歩道での一時停止率が全国1位となっており、交通マナーの改善も見られる。
しかしインターネット上では、今でも松本走りに遭遇して危険な目に遭ったという投稿が絶えない。東京から訪れた人が「交差点で直進しようとしたら、右折車が突然曲がってきて何度もヒヤヒヤした」と語るなど、問題は完全には解決していない。
松本走りを根絶するには、道路インフラの整備が不可欠だという指摘がある。
右折レーンのない道路で「直進車最優先」を徹底すると、大渋滞が発生してしまう。道路の役割は交通の流れを確保することであり、インフラが不十分な状態で取り締まりだけを強化しても限界がある。
根本的な解決には、右折レーンの増設や信号機の改善など、一つひとつの交差点を見直していく必要がある。
松本走りという呼称は、松本という地名にとって不名誉なものとなっている。その根絶は、単なる交通安全の問題だけでなく、地域のイメージ向上にもつながる重要な課題である。
地元住民の中には「道が狭く右折レーンも少ないので、つい強引に曲がってしまう」と説明する人もいるが、法律違反であることに変わりはない。
松本走りと同様の危険運転は全国各地に存在する。
これらはいずれも道路交通法に違反する行為であり、「ルール」や「マナー」という言葉でごまかせるものではない。
松本走りをなくすには、一人ひとりのドライバーの意識改革が必要である。
右折車は、直進車や左折車が優先であることを肝に銘じ、交差点の中心付近を大きく回って徐行する正しい右折を心がけるべきである。
地元ドライバーの中には「松本走りをするにはかなりの視野とスキルが必要。なるべく使いたくない」と語る人もいる。安全運転を第一に考え、後続車に急かされても焦らず、正しい方法で右折することが求められている。
「松本走り」について、誤字脱字や情報の追加・修正など、改善のご提案をお待ちしています。
コメントをお願いしいます!