茨城ダッシュ

いばらきだっしゅ

茨城ダッシュ(いばらきだっしゅ)は、茨城県で見られる危険な運転行為の一種で、交差点において信号が赤から青に変わった瞬間、またはその直前に、対向直進車よりも先に猛スピードで右折する運転行為を指す。この運転行為は道路交通法に違反する危険な交通違反であり、茨城県警察が積極的に注意喚起と取り締まりを行っている。

定義と行為の内容

茨城県警察本部によると、茨城ダッシュとは「交差点手前で赤信号で停止中、青信号に変わった瞬間、またはその直前に猛ダッシュで対向直進車よりも先に右折すること」と定義されている。

具体的には、右折待ちをしている車両が、信号が青に変わるタイミングで急発進し、直進してくる対向車よりも先に交差点を右折する行為である。直進車が発進する前に右折しようとする車は、信号が変わる前にジリジリと動いたりすることが観察される。

危険性

茨城ダッシュは以下のような重大な危険性を持つ運転行為である。

対向直進車より先に交差点を小回りして右折するため、進行先の横断歩道を横断する歩行者の接近に気づくのが遅れる危険性がある。また、フロントガラス右側の車両ピラーによる死角が増えるため、横断中の歩行者や交差点を直進してくる二輪車、自転車を危険にさらす行為となる。

わずかにでも発進が遅れたり、直進車のスピードが速かったりすれば、衝突事故を起こしてしまう極めて危険な運転方法である。茨城県警本部によると、2020年中に発生した交差点における四輪車と歩行者の事故のうち、約8割が右折時だったという結果が出ている。

違反内容と罰則

茨城ダッシュは道路交通法第37条に違反する交通違反である。本来、交差点を右折する際に直進または左折しようとする対向車がいた場合、対向車が優先と定められている。

茨城ダッシュを行った場合、以下の違反に該当する可能性がある。

  • 交差点優先車妨害違反(道路交通法第37条)
    • 違反点数:1点
    • 反則金:6000円(普通車)
  • 交差点右左折方法違反
    • 違反点数:1点
    • 反則金:4000円(普通車)
  • 横断歩行者等妨害等違反(道路交通法第38条)
    • 歩行者の横断中に横切る行為
    • 違反点数:2点
    • 反則金:7000円(普通車)
  • 信号無視(道路交通法第7条)
    • 青信号になる前に進んでしまう行為
    • 違反点数:2点
    • 反則金:7000円(普通車)

事故を起こして人を死傷させれば危険運転として逮捕され、重い刑罰が科せられる可能性がある。

名称の由来

信号待ちから発進する際に先に右折してくる対向車の頻度には地域によってばらつきがあり、特に茨城県で多いとされることから、茨城県の名前が由来となって「茨城ダッシュ」と呼ばれるようになった。

一説によると、茨城ダッシュは右折専用レーンが少なかった時代に、後続の車が渋滞しないように直進車が譲ったことから始まったのではないかという考察もある。当初は善意の譲り合いから始まった行為が、時代とともに危険な運転習慣として定着してしまった可能性が指摘されている。

茨城県警察の対応

2021年8月、茨城県警察本部は公式Twitterで「茨城ダッシュは違反です」と注意喚起を行い、全国的に話題となった。これにより「茨城ダッシュってなによ」「茨城県警の公式ワードだったのか」などと多くのコメントを集めることとなった。

2023年6月20日には、茨城県警察が危険運転の「茨城ダッシュ」を根絶すると発表し、白バイの編隊を組んで緊急の取り締まりを実施した。県警の交通部長は「茨城ダッシュは大変恥ずかしい。茨城の交通マナーの悪さを如実にあらわしている」とコメントし、本腰を入れた姿勢を示している。

茨城県警では、信号交差点において白バイや覆面パトカーでの取り締まりを強化している。

実態

茨城県内に住む住民の間でも、茨城ダッシュに関する認識は分かれている。SNS上では「初めて知った。今まで遭遇したことがない」という声がある一方、「ときどき見かけるがそこまで頻繁ではない」「運転が荒いのは事実。県民でも危ないと思っている」など、茨城ダッシュの存在を認める声もある。

全国のご当地ルール

茨城ダッシュと同様の危険な運転行為は全国各地に存在し、それぞれ「ご当地ルール」として名称が付けられている。

茨城ダッシュと同義とされる運転には以下がある。

長野県松本市の「松本走り」は、青信号で直進車よりも右折車が先に曲がる行為である。

愛媛県の「伊予の早曲がり」も同様に、青信号で直進車よりも先に右折する行為を指す。松山市街では「伊予の早曲がり禁止」という看板があちこちで見かけられるという。

その他にも、愛知県の「名古屋走り」、大阪府の「大阪走り」、岡山県の「岡山ルール」、山梨県の「山梨ルール」、徳島県の「阿波の黄走り」、京都府の「京都曲がり」など、全国各地に危険な運転行為を表す名称が存在している。

対策

茨城県警は、ドライバー一人一人が正しい右折方法を習慣化することが「茨城ダッシュ」を根絶することにつながると呼びかけている。

対策案として、茨城ダッシュが多発している交差点には、最初は直進と左折だけ青矢印の信号機を点灯させ、時間差で数秒後に通常の青信号に切り替えて右折を許可するという信号システムの導入も提案されている。信号の点灯タイミングをずらすことで、茨城ダッシュを物理的に防止できる可能性がある。

社会的認識

茨城ダッシュのような地域限定のローカル交通ルールは、一種の慣習かのように感じている人も少なくないが、れっきとした犯罪行為である。地域では「ご当地運転」などと愛嬌のようにとらえられることもあるが、道路交通法に照らせば違法となる危険な運転であり、そのような言葉で済ませられるものではない。

運転手としては「すばやく運転している」「要領が良い」と錯覚している場合もあるが、周囲の車両からみれば危険極まりない行為である。大事故を起こす前に運転方法を見直すことが求められている。

外部リンク

この記事の著者

男の感性に火をつける、ライフスタイルWEBマガジン「GENTS-ジェンツ-」運営。
40代を中心とした大人世代に向けて、茨城県南エリアの情報を本当に良いと感じたものだけを厳選して紹介しています。

コメントをお願いしいます!

コメントする

このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleの プライバシーポリシー利用規約が適用されます。
※コメントは編集部の承認を経て掲載されます。
※コメントの投稿前には 利用規約 の確認をお願いします。

日本語が含まれない投稿は無視されますのでご注意ください。(スパム対策)