笠間の栗

かさまのくり

笠間の栗(かさまのくり)は、茨城県笠間市で生産される栗の総称である。笠間市は日本一の栗の栽培面積と経営体数を誇り、茨城県における主要な栗の産地として知られている。

概要

茨城県は栽培面積・出荷量ともに全国シェア26%を占め、全国第1位を誇る栗の産地である。その中でも笠間市は、栗の栽培面積において全国の市町村ランキングで第1位に位置し、県内一の栽培面積を誇る代表的な産地として知られている。

笠間市は「関東の小京都」とも呼ばれ、笠間焼で知られる陶芸の街としても有名であるが、栗の産地としての歴史も古く、年間を通して穏やかで昼夜の温度差がある気候条件と、保水性・通気性に優れた火山灰土壌が、美味しく薫り高い栗を育んでいる。

歴史

日本における栗栽培の歴史は縄文時代にまで遡り、青森県の三内丸山遺跡をはじめ、各地の遺跡から炭化した栗が出土している。茨城県では明治30年頃から本格的な栗の栽培が始まったとされる。

笠間市においては、かつての養蚕の桑畑に栗の木を植えたのが盛んになった始まりで、昭和初期から本格化し、約100年の歴史を有する。松くい虫の影響などもあり、栗栽培が特に盛んになったという経緯がある。戦前から栗を庭先で販売する方法も存在し、地域に根付いた産業として発展してきた。

栽培の特徴

土壌と気候

笠間市の栗栽培に適した条件として以下が挙げられる:

  • 火山灰土壌(関東ローム層)による保水性と通気性
  • 盆地特有の昼夜の寒暖差
  • 年間を通して穏やかな気候
  • 台風や雪による被害が少ない安定した気象条件

栽培品種

笠間市では十数種類の栗を栽培している。主要な品種としては以下のものがある:

早生種(9月上旬~中旬収穫)

  • 丹沢:収量が多く、果肉の色が鮮やかで加工に向く

中生種(9月中旬~下旬収穫)

  • 筑波:風味豊かでしっとりした果肉
  • 銀寄:甘みが強い
  • 利平:大粒で食味が良い

晩生種(10月上旬~下旬収穫)

  • 石鎚:煮くずれが少なく渋皮煮に適する
  • 大峰
  • 岸根

その他、「ぽろたん」などの新しい品種も栽培されている。品種によって甘みの強さ、風味の豊かさ、加工適性などが異なり、それぞれの特性を活かした栽培が行われている。

生産体制

笠間市では品種別・サイズ別に選別を行っており、品質の均一化と消費者ニーズに合わせた提供ができる体制が整っている。これは一般の栗産地では珍しい取り組みであり、笠間の栗のブランド力向上に寄与している。

栗農家の数は約270人(農協栗部会)で、年間約175トンを出荷している。収穫は完全な手作業で行われ、毬(いが)が割れて落ちた栗を長靴で踏んで取り出し、長いトングで拾い集める重労働である。

貯蔵栗

笠間市では平成20年から、さらに品質の高い栗を目指し「貯蔵栗」の開発に取り組んできた。

特徴

貯蔵栗は、厳選された大粒の栗を一定期間冷蔵貯蔵することで、栗に含まれる酵素(アミラーゼ)がデンプンを分解し、糖を作る働きを利用して甘さを引き出した商品である。ただし、温度管理が難しく、低すぎると凍結して商品価値を失い、また乾燥を防ぐ必要があるなど、様々な条件を検討しながら商品化が図られた。

対象品種

「丹沢」「大峰」「筑波」「銀寄」「石鎚」「岸根」の6品種が貯蔵栗としてブランド化されている。

平成24年6月28日には、茨城中央農業協同組合栗部会、茨城中央農業協同組合、笠間市、茨城県、イオンリテール株式会社による「笠間貯蔵栗研究会」が設立された。

イベントと取り組み

かさま新栗まつり

笠間市の特産である栗をテーマに、毎年9月の最終土曜日から翌日曜日、もしくは10月の第1土曜日・日曜日に開催される祭りである。笠間芸術の森公園を会場に、生栗・焼き栗・栗商品の販売、栗拾い体験、栗スイーツづくり体験、栗を使ったゲームなどが催され、家族連れでも楽しめる内容となっている。

ブランド化への取り組み

笠間市では「笠間の栗」のブランド力向上のため、多くの取り組みを行っている:

  • 「笠間の栗を考える会」の発足
  • 栗生産者への補助事業
  • 市農業公社による後継者のいない栗畑の管理
  • 植栽、改植、剪定などによる生産拡大
  • 品種・サイズ別出荷の推進
  • 「笠間てくてく栗図鑑」「笠間の栗もんぶらり旅マップ」などの情報発信

東京・銀座のIBARAKI senseでの笠間の栗フェア開催など、県外でのPR活動も積極的に行われている。

加工品と食文化

笠間の栗は、そのまま茹でて食べるほか、栗ごはん、渋皮煮、甘露煮、栗ペーストなど様々な形で加工される。近年は、モンブランをはじめとする洋菓子、和菓子、栗アイス、栗ジェラート、栗パイなど、多様な商品が開発されており、笠間市内には栗を使ったスイーツを提供する専門店が多数存在する。

特に「栗のいえ」など、パリのミシュラン三つ星レストランで修業したパティシエが手がける店舗もあり、笠間は「モンブランのまち」としても知られるようになっている。

道の駅かさまでは、栗の含有率80%を超える「プレミアムすいーとまろん」など、笠間でしか買えない限定商品も販売されている。

課題と展望

生産量日本一を誇る笠間の栗だが、栗農家や生産面積の減少、栗畑の用途変更が進んでいる現状があり、耕作地の維持や生産量の確保が今後の大きな課題となっている。需要があっても生産量が確保できない状況は、笠間の栗ブランドにとって大きなマイナスである。

市では対策として栗農家への支援を行っているほか、市農業公社が後継者のいない栗畑を中心に借地をし、植栽、改植、剪定などを行い、生産拡大と品種・サイズ別出荷を推進する取り組みを進めている。

将来的には、栗の和菓子・洋菓子・料理・加工商品の販売など、すべての味わいができる拠点づくりを進め、長野県小布施町に負けない栗の街を目指している。

外部リンク

この記事の著者

男の感性に火をつける、ライフスタイルWEBマガジン「GENTS-ジェンツ-」運営。
40代を中心とした大人世代に向けて、茨城県南エリアの情報を本当に良いと感じたものだけを厳選して紹介しています。

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