乙戸沼

おっとぬま

乙戸沼(おっとぬま)は、茨城県土浦市中村西根に位置する沼で、その周囲は乙戸沼公園として整備されている。土浦市の南西端、つくば市との市境付近にあり、面積約13ヘクタールの公園の中心に沼が広がる。乙戸沼は利根川水系に属し、一級河川・小野川の支流である乙戸川の水源となっている。乙戸川は土浦市・阿見町・牛久市を流れて小野川に合流し、霞ヶ浦へ注いでいる。もともと水田に水を供給する灌漑用のため池であり、現在は周辺が都市公園として整備され、自然豊かな景観と市民の憩いの場を提供している。

名称の由来と歴史

「乙戸沼」の名前は、かつて沼の形が漢字の「乙」に似ていたことに由来すると伝えられる。沼の入口(戸)の側に集落が発達したことから「乙戸」という地名が生まれ、古い文献『新編常陸国誌』にもその名が見られる。現在の読みは音便化して「おっと沼」となったものと考えられている。

乙戸沼は昔に比べて面積が縮小しており、昭和期に行われた二度の埋め立てによって元の約3分の1の規模にまで減少した。昭和後期までに沼の周辺は都市公園として整備され、1980年代には土浦市立乙戸小学校や青少年研修センターなどの公共施設も近隣に建設された。こうして乙戸沼公園は地域住民の憩いの場として本格的に活用されるようになった。

地理と環境

乙戸沼は標高数メートル程度の低地に位置する浅い沼で、一周は約1.7キロメートルに及ぶ。現在も乙戸川を通じて霞ヶ浦へと水が流出する自然沼であり、周辺は関東平野の田園地帯に接している。沼の南側には豪雨時の調整池を兼ねた水生植物園が整備されており、花菖蒲などの水生植物が栽培されている。気候は温暖な関東内陸型で、霞ヶ浦に近いことから湿度がやや高く、年間を通じて水鳥が生息・飛来する豊かな水辺環境が保たれている。

公園の概要と施設

乙戸沼の周囲は土浦市が管理する都市公園「乙戸沼公園」として整備されており、無料で開放されている。園内には芝生広場、散策路、児童向け遊具などが配置され、市民のスポーツやレクリエーションに利用されている。沼を囲む遊歩道はゴムチップ舗装のジョギングコースになっており、1周約1,770メートルのコース上には距離表示が設置されている。高低差が少ない平坦な周回路のため、ウォーキングやランニングの初心者から上級者まで幅広く親しまれている。

公園内には複数の駐車場とトイレが整備されており、駐車場は無料で利用できる。通常は午前8時30分から夜間22時まで開放されており、夜間は施錠される。沼の中央には噴水が設置されており、公園の景観アクセントとなっている。

園内には大型複合遊具や幼児向け遊具、水辺で遊べるせせらぎなどもあり、子ども連れのファミリーに人気である。売店はないが、自動販売機が設置されている。

動植物・生態系

乙戸沼公園は自然観察スポットとしても知られ、植物や動物が多様である。園内にはソメイヨシノやヤエザクラなど約500本の桜の木が植えられ、春には桜の名所となる。初夏には約600品種・10万株以上の花菖蒲が咲き誇り、沼辺を彩る。

魚類ではコイ、フナ、ブラックバスが生息し、釣りを楽しむ人も多いが、保護区域では釣りが制限されている。カメ、カエル、トカゲなどの小動物も生息する。

乙戸沼は野鳥観察地としても有名で、冬季にはコハクチョウをはじめ多様なカモ類が飛来する。確認されている主な鳥はヒドリガモ、オナガガモ、オオバンなどである。春から秋にかけてはサギ類やシジュウカラ、メジロなどの留鳥も見られる。

季節ごとの見どころ

春(3月下旬〜4月)
桜の名所として知られ、沼を取り囲む約500本の桜が満開となる。夜にはぼんぼりが灯され、夜桜も楽しめる。

初夏(5月〜6月)
花菖蒲が見頃を迎え、水生植物園では多彩な色の花が咲き誇る。

夏(7月〜8月)
ハスやスイレンの花が水面に浮かび、釣りや散歩を楽しむ人が多い。

秋(10月〜11月)
桜やイチョウなどの紅葉が見頃。澄んだ空気の中で散策を楽しめる。

冬(12月〜2月)
コハクチョウやカモ類が飛来し、野鳥観察に最適な季節。朝霧に包まれる沼は幻想的な風景を見せる。

地域と文化との関わり

乙戸沼公園は土浦市民の憩いの場として親しまれており、散歩やジョギング、子どもの遊び場として利用されている。春の花見シーズンには地域の交流の場となり、市民団体による清掃活動や自然観察会も行われる。沼の名を冠した「乙戸」という地名は現在も市内に残り、地域の歴史と深く結びついている。

アクセス

  • 所在地:茨城県土浦市中村西根
  • 最寄り駅:JR常磐線「荒川沖駅」から関鉄バス「関鉄ニュータウンつくば」下車徒歩数分
  • :常磐自動車道「桜土浦IC」から約15分、圏央道「阿見東IC」から約10分
  • 駐車場:無料(8:30〜22:00)

乙戸沼公園は、自然と触れ合いながら散策やレジャーを楽しめるスポットとして、地域住民から観光客まで幅広く親しまれている。豊かな生態系と四季折々の景観を有するこの公園は、都市近郊における貴重な水辺環境として大切に保全・活用されている。

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この記事の著者

男の感性に火をつける、ライフスタイルWEBマガジン「GENTS-ジェンツ-」運営。
40代を中心とした大人世代に向けて、茨城県南エリアの情報を本当に良いと感じたものだけを厳選して紹介しています。

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