土浦市(つちうらし)は、茨城県の県南地域に位置する市。業務核都市、国際会議観光都市に指定されています。日本第2位の広さを誇る霞ヶ浦の西岸に位置し、古くから県南地域の商業・行政の中心的な役割を担ってきました。隣接するつくば市を中心としたつくば都市圏に含まれています。
概要
基本データ
- 人口: 約14万人(2025年時点)
- 面積: 122.89平方キロメートル
- 人口密度: 約1,151.8人/km²
- 市制施行: 1940年(昭和15年)11月3日
- 位置: 東京から約60km、成田空港から約40km、水戸市から約35km
土浦市の人口は1994年に14万人台に到達して以降、ほぼ横ばいで推移しています。かつては都内への通勤需要による人口流入が多かったものの、近年はつくば都市圏の一角としての人口流入が見られるようになっています。
歴史
城下町時代
土浦は江戸時代、土屋藩の城下町として栄えました。土浦城(亀城)を中心に商業が発展し、旧水戸街道の宿場町としても重要な役割を果たしました。
市名の由来
土浦という地名の由来については、いくつかの説があります:
- 土浦村(現在の稲敷郡美浦村に吸収合併)からそのまま借りたという説
- 土屋藩の「土」と十一の「浦」の合成地名という説
- 「津々浦々」からの転訛という説
近代化と軍都としての発展
明治時代以降、土浦は大きく発展を遂げました:
- 1918年(大正7年): 筑波鉄道(旧・関東鉄道筑波線、1987年廃止)開通
- 1929年(昭和4年): 東隣の稲敷郡阿見村(現在の阿見町)に海軍航空隊が設置
海軍航空隊の設置により、土浦は交通の要衝となり、料亭や遊廓、休養施設が多数建設され、終戦まで「海軍の町(軍都)」として知られました。土浦海軍航空隊は予科練(予科練習生)の練成を行う重要な教育機関で、多くの若者が集まりました。
ツェッペリン号の飛来
1929年8月19日、ドイツの大型飛行船「グラーフ・ツェッペリン号」が世界一周の途中、土浦に寄航しました。この歴史的な出来事は、現在も土浦市の重要な観光資源となっており、ツェッペリン号にちなんだカレーなどの特産品が開発されています。
戦後の発展
戦後は、商業都市として発展を続けました:
- 土浦駅西口に小網屋(1999年閉店)、京成百貨店(1989年閉店)、丸井(2003年閉店)、イトーヨーカドー(2014年閉店)など大型商業施設が次々と開業
- 1985年(昭和60年): 国際科学技術博覧会(つくば万博)開催により、周辺のインフラ整備が進む
平成の合併
- 1940年(昭和15年)11月3日: 新治郡土浦町・真鍋町が新設合併し、土浦市になる(茨城県内で三番目の市制施行)
- 1948年(昭和23年): 朝日村の一部と都和村を編入
- 1954年(昭和29年): 上大津村を編入
- 2006年(平成18年): 新治村を編入
つくば市との合併構想
2014年2月10日、土浦市長とつくば市長が合同記者会見を開き、両市の合併・中核市への発展を視野に入れた定期的な勉強会の開催が発表されました。しかし、2017年につくば市側からの申し入れにより勉強会は解消されました。
地理
地形
土浦市は霞ヶ浦の西岸に位置し、関東平野の一部である筑波台地と稲敷台地に広がっています。市域は比較的平坦で、標高は20〜30m程度です。
- 湖: 霞ヶ浦(日本第2位の広さ)
- 河川: 桜川、新川など
- 山地: 朝日峠展望公園(標高302m)
気候
土浦市は温暖湿潤気候に属し、年間平均気温は約15.5度です。一年を通して晴れの日が多いのが特徴で、夏は霞ヶ浦の水温が30度を超える日もあります。冬に雪が積もることはほとんどありませんが、「筑波おろし」と呼ばれる冷たく乾いた北西風が吹くことがあります。
隣接自治体
交通
鉄道
JR常磐線が市内を南北に通っており、以下の3駅があります:
土浦駅から東京駅までは乗り換えなしで約1時間程度でアクセス可能です。2020年3月14日、東日本大震災の影響で不通になっていた常磐線全線復旧に伴い、1日1往復のみ乗換不要でいわき駅以北の原ノ町駅・仙台駅方面へのアクセスが可能になりました。
バス
関東鉄道とジェイアールバス関東によって路線バスが運行されています。主に土浦駅より、住宅街や教育機関、医療機関等への連絡路線が運行されています。
市内には以下のコミュニティバスも運行:
- まちづくり活性化バス「キララちゃん」(総務省平成17年度地域づくり総務大臣表彰受賞)
- 土浦市コミュニティ交通「つちまるバス」
道路
- 高速道路: 常磐自動車道(桜土浦IC)
- 国道: 国道6号(南北)、国道125号、国道354号(東西)
- 主要地方道: 茨城県道24号土浦境線(土浦学園線)など
土浦駅東口からはつくば市へのメインルートとして、高架の土浦ニューウェイが延びています。
観光・文化
土浦全国花火競技大会
土浦全国花火競技大会は、土浦市を代表する最大のイベントで、日本三大花火大会及び日本三大競技花火大会の一つに数えられます。
歴史
- 大正14年(1925年): 土浦市文京町にある神龍寺の24代住職・故秋元梅峯師が、霞ヶ浦海軍航空隊殉職者の慰霊と関東大震災後の不況で疲弊した土浦の経済活性化のため、私財を投じ霞ヶ浦湖畔で開催したのが始まり
- 第二次世界大戦で一時中断
- 昭和21年9月: 第14回大会として再開
- 昭和46年(第40回): 現在の桜川畔での開催に移転
山本五十六元帥も大正13年3月から14年12月頃まで神龍寺に下宿しており、現在新潟県長岡市にある五十六像も当初は神龍寺にありました。
特徴
- 開催時期: 毎年11月第1土曜日(荒天時は延期)
- 秋季に定期開催される数少ない花火大会の一つ
- 競技部門: スターマインの部、10号玉の部、創造花火の部の3部門
- 来場者数: 毎年約80万人
日本三大花火大会では唯一三大都市圏での開催であり、東京から日帰りが可能な交通の便の良さから多くの見物客が訪れます。
霞ヶ浦
日本第2位の広さを誇る湖で、土浦市の観光の中心となっています。
- 面積: 約220km²(琵琶湖に次ぐ)
- 流域面積: 茨城県全体の3分の1以上
- 特徴: 豊かな自然、多くの魚や水生植物、冬には多くの渡り鳥が飛来
霞ヶ浦観光帆引き船
霞ヶ浦の夏から秋にかけての風物詩で、明治13年に考案された帆引き網漁の技術を観光用に復活させたものです。
- 運航期間: 7月21日〜10月中旬の毎週土・日曜日および祝日
- 特徴: 高さ9メートル、幅16メートルの巨大な帆を張り、風の力で船を横流しさせる
- 歴史: 昭和42年にトロール船に取って代わられたが、昭和46年に観光船として復活
- 文化財: 平成30年「霞ヶ浦の帆引き網漁の技術」が国選択無形民俗文化財に選定
土浦市、かすみがうら市、行方市の3市がそれぞれ観光帆引き船を運航しています。
主要観光スポット
霞ヶ浦総合公園
- 面積: 霞ヶ浦のほとりに広がる大規模公園
- シンボル: オランダ風車展望台(霞ヶ浦を一望できる)
- 見どころ:
- 4月中旬〜下旬: 約30,000本のチューリップ
- 7月中旬〜8月上旬: 200品種以上の花蓮
- ネイチャーセンター: バードウォッチング設備完備
- 冬季イルミネーション
亀城公園
- 旧土浦城址を整備した公園
- 桜の名所として知られ、春には多くの花見客で賑わう
- 5月下旬〜6月下旬: 約600品種の花菖蒲が見頃
朝日峠展望公園
- 標高302メートルの絶景スポット
- 関東平野を一望でき、晴れた日には富士山や東京スカイツリーまで見える
- パラグライダーなどのスカイスポーツが盛ん
- 茨城観光百選にも選ばれている
桜川堤
- 土浦市を代表する桜の名所
- 約3kmにわたり500本のソメイヨシノが咲き誇る
- 見頃: 3月下旬〜4月上旬
- 土浦桜まつりのメイン会場
まちかど蔵
旧水戸街道沿いには歴史的な建造物が集積しており、江戸時代後期から明治時代初期に建造された蔵が保存されています。
- まちかど蔵「大徳」: 観光案内、喫茶店
- まちかど蔵「野村」: 展示施設
- 観光協会の事務所も「大徳」に設置
文化財
国指定重要文化財
- 般若寺の銅鐘(常陸三古鐘の一つ)
- 等覚寺の銅鐘(常陸三古鐘の一つ)
- 法雲寺の絹本著色高峰和尚像、絹本著色復庵和尚像
その他の名所
- 真鍋の桜(土浦市立真鍋小学校): 茨城県指定天然記念物
- 宍塚地区: 都市近郊型里山としての自然が残る貴重な場所
産業・経済
財政
- 財政力指数: 0.81(2023年度)
- 歳入: 約635億円(2023年度決算)
- 歳出: 約604億円(2023年度決算)
産業構造
2015年の国勢調査による産業別就業人口割合:
- 第1次産業: 3.39%
- 第2次産業: 25.28%
- 第3次産業: 71.34%
れんこん生産日本一
土浦市は日本一のれんこん産地として知られています。
生産実績
- 茨城県のれんこん: 作付面積、出荷量ともに全国トップ
- 全国出荷量の約53%を占める
- 東京市場では90%以上のシェア
- そのほとんどが霞ヶ浦周辺(土浦市を中心とする流域)で生産
栽培条件
霞ヶ浦沿岸は低湿地帯が多く、以下の条件がれんこん栽培に適しています:
- あしなどの野草が堆積して土壌が肥えている(泥炭性埴土)
- 冬でも降雪が少ない温暖な気候
- 水温が高い
特徴
土浦のれんこんの特徴:
- 肉厚で繊維質が細かい
- 甘味と粘りが強い
- 旬: 晩秋から冬にかけて(11月〜3月がピーク)
- 新れんこん: 6月下旬から「新れんこん」として出回り、アクが少なくみずみずしい
れんこんを活用した取り組み
土浦市では日本一のれんこん産地のPRと消費拡大のため、様々な取り組みを行っています:
- れんこんデジタルマップ: 食べる・買う・フォトスポットをまとめたマップ
- れんこんグランプリ: 農家が出品したれんこんのコンテスト
- キユーピー株式会社との連携: れんこんサラダレシピの共同開発
- 焼酎の商品化: 株式会社明利酒類との協力
- れんこん料理フェア: 霞ヶ浦周辺市町村で毎年11月に開催
カレーのまち
つちうらカリー物語
1929年にツェッペリン号が土浦に飛来した際、飛行船の乗組員に土浦ならではの食材を使ったカレーを振る舞って歓迎した歴史があります。
平成16年に「食のまちづくり検討委員会」を組織し、日本一の生産量を誇る「土浦レンコン」を活用したオリジナルカレーの開発普及を目指しています。
- 土浦ツェッペリンカレー: レンコンと茨城ブランドのローズポークを使用
- 土浦カレーフェスティバル: 毎年11月開催、「C-1グランプリ」でナンバーワンカレーを決定
教育
幼稚園・保育施設
- 市内に約40箇所
- 令和3年度の待機児童数: 3名(茨城県南地区では比較的少ない)
小中学校
- 市内に約40校
- スクールバスの利用可能
- 土浦市立土浦幼稚園: 1885年設立、茨城県で最初の幼稚園で、全国でも数園しかない明治10年代(1877年〜1886年)に創立し今日まで続いている公立幼稚園の一つ
子育て支援
- 入学祝品としてランドセルを無償配布: 毎年小学校へ進学する児童に
- 子育て支援コンシェルジュ: 出産後の子育て支援サービス
- 各種手当: 児童手当、児童扶養手当、維持手当など
高等教育機関
- つくば国際大学
- つくば国際短期大学
- アール医療福祉専門学校
- 筑波研究学園専門学校
国際交流
姉妹都市
友好都市
今後の展望
人口動態
土浦市の人口は1994年以降ほぼ横ばいで推移していますが、つくば都市圏の一角として一定の人口を維持しています。同じ常磐線沿線の龍ケ崎市や取手市では人口減少に直面している中、土浦市は比較的安定しています。
中心市街地の活性化
かつて土浦駅周辺には多くの大型商業施設がありましたが、相次いで閉店しました。土浦市ではコンパクトシティ化を進めており、中心市街地活性化案が国に認可されています。2015年春には、イトーヨーカドー跡地に土浦市役所が移転しました。
広域連携の可能性
2014年にはつくば市との合併を視野に入れた勉強会が開催されましたが、2017年に解消されました。しかし、将来的には以下のような広域連携の可能性が議論されています:
- 中核市への発展
- つくば市を中心とする政令市構想
- 周辺自治体(かすみがうら市、守谷市、石岡市など)との連携強化
かすみがうら市では将来の合併を視野に、土浦市と連携を強化したい考えを示しています。
地域資源の活用
- 霞ヶ浦と日本一のレンコン産地としてのブランド強化
- 土浦全国花火競技大会の更なる発展
- 歴史的建造物や文化財を活用した観光振興
- つくば市との連携による科学技術産業の誘致
持続可能な都市づくり
- つくば都市圏の一角として、研究学園都市と連携した発展
- 霞ヶ浦の環境保全と観光資源としての活用
- 公共交通の充実とコンパクトシティの推進
- 子育て支援の充実による若い世代の定着促進
特色
土浦市は、日本第2位の広さを誇る霞ヶ浦に面し、水と緑に恵まれた自然環境を持つ都市です。日本三大花火大会の一つである土浦全国花火競技大会、日本一のレンコン産地、ツェッペリン号飛来の歴史など、独自の魅力を持っています。
かつて海軍の町として、また県南地域の商業の中心として栄えた歴史を持ち、現在もつくば都市圏の重要な一角を担っています。東京から約60kmという立地の良さ、豊かな農業資源、歴史的な観光資源を活かしながら、持続可能な都市づくりを進めています。
隣接するつくば市との連携を深めながら、霞ヶ浦という貴重な自然資源と、100年近い歴史を持つ花火競技大会、日本一のレンコン産地というブランドを活かした独自の発展を目指しています。
外部リンク
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